介護職が続かないわけ〜介護が嫌いじゃないのに、なぜ辞めてしまうのか〜

介護

【介護職が続かないわけ】


「介護の仕事自体は好きだったんです。でも、続けられませんでした。」

このような相談を、私は何度受けてきたかわかりません。
介護職に就いた人のなかには、たとえ未経験からのスタートであっても、介護そのものにやりがいを感じ、「人の役に立ちたい」という熱い想いを持って飛び込んでくる方が少なくありません。
排泄介助も、食事介助も、「最初は不安だったけど、やってみたら意外と大丈夫でした」と前向きに取り組む人たち。

それなのに、半年後、1年後には、職場を去ってしまう。
「なぜ?」という問いに対して、本人も答えを持てずにいることが多いのです。


離職理由は「きついから」だけではない


厚生労働省の調査によれば、介護職の離職理由としてよく挙げられるのは、「人手不足による業務の負担」「給与水準への不満」「人間関係の悩み」などです。これらは確かに実態として存在し、現場で日々奮闘している介護職の方々にとっては深刻な課題です。

しかし、それだけでは説明のつかない離職も、実はたくさんあるのです。

私は、介護現場で働いた経験と、法人本部で人材育成や運営にも携わった経験を通じて、ある共通点に気づきました。

それは、「辞めてしまう人の多くは、介護そのものに絶望したのではない」ということです。


介護が「嫌い」なのではない


むしろ、介護職を離れる人の中には、介護に対して愛情を持っていた人が少なくありません。利用者さんとのふれあいや、ご家族からの「ありがとう」の言葉に喜びを感じ、自分の仕事にやりがいを見出していた。

それなのに、なぜ離職してしまうのか。

その答えは、「周囲とのギャップ」にあるのです。


志のある人が孤立してしまう現実

画像
誰にも頼れず、ひとりで抱え込む日々


介護業界にはさまざまな人が集まってきます。未経験の人、子育てがひと段落して復職した人、介護の資格を持っている人、事情があって働き口を探している人……。

そんな多様な人材が混在する職場で、志高く入職した人ほど、違和感を覚えることがあります。

「もっと丁寧に接したいのに、現場の空気は流れ作業のように感じる」
「もっと成長したいのに、周囲は現状維持で満足している」
「もっと相談したいのに、話し相手がいない」

そうした孤独感が、少しずつ心をむしばんでいきます。


気づかぬうちに「夢」を失っていく


周囲に流され、自分の理想が「浮いている」ように感じると、人は次第に口を閉ざし始めます。
「どうせ言っても変わらない」
「目立たないようにしよう」
「他の人もこんな感じだし……」

やがて、初めに持っていた情熱や想いは影を潜め、自分でもその火が消えていったことに気づかないまま、日々をただ「こなす」ようになります。
そうして「何か違う」と感じて、転職を考え始めるのです。


環境を変えればうまくいく?


一度辞めて、次の職場へ。新しい環境に期待を込めて「今度こそ」と臨みます。
実際、新しい職場では、少しだけ風通しがよかったり、自分の意見が通りやすかったり、最初は「変わった」と感じることができるかもしれません。

しかし、時間が経つと、また同じ悩みに直面します。
・現場に学び続ける姿勢がない
・キャリアの話をできる人がいない
・評価が不透明でモチベーションが保てない

そんな日々の中で、再び「ここも違うのか」と感じてしまう。

そして転職を繰り返すうちに、職歴が多くなり、年齢も重ね、やがて「希望の条件では採用されない」という現実に直面します。


本当は、「人」とのつながりが必要だった


介護の仕事は、チームで成り立っています。そして、心を使う仕事です。だからこそ、自分の想いや悩みを安心して話せる「誰か」が必要です。

本音を言えば、「もっとこうしたい」「こんな風に成長したい」という思いを持っている人は少なくありません。しかし、周りに同じ志の人がいなければ、その思いを持ち続けることは難しいのです。

逆に、たった一人でも、寄り添ってくれる存在がいれば、人は驚くほど力を発揮します。
「話を聞いてくれる人がいたから、あと1年頑張れた」
「一緒に目標を考えてくれたから、転職せずに済んだ」
「『あなただけじゃない』と言ってくれたことで、前を向けた」

そんな声を、私は何度も耳にしてきました。


だからこそ、キャリアコンサルタントの存在が必要


私が国家資格キャリアコンサルタントとして、介護職の方々と向き合っている理由は、まさにここにあります。

キャリアの悩みは、単なる「転職」や「キャリアアップ」だけではありません。
自分の「想い」や「ありたい姿」と、現実とのギャップに悩み、心が疲れてしまうこと。それも立派なキャリアの問題です。

介護という尊い仕事を、志を持って始めたのに、環境に流されて辞めてしまう。そんな人を、もうこれ以上増やしたくない。

だから私は、「相談できる場」を作りたいと考えています。


最後に


介護の仕事は、決して楽なものではありません。けれど、その分、得られるやりがいや感動もまた、他の職業にはない深さがあります。

もし今、あなたが「もう無理かもしれない」と感じているとしたら、それはあなたが介護に向いていないのではありません。
周囲に、あなたの志を理解し、支えてくれる人がいないだけかもしれません。

あなたが最初に抱いた想いは、決して間違っていません。

その火を、もう一度灯すお手伝いを、私たちキャリアコンサルタントにさせてください

コメント

タイトルとURLをコピーしました