はじめに
「正社員として働きたいけれど、面接ではどんなことを見られているのだろう?」
そんな不安を抱える方は少なくありません。パート採用と違って、正社員採用では“即戦力”や“長期的な活躍”を前提にした視点で見られることが多くなります。
勤務日数や時間が限られるパートと比べ、正社員は「職場の中心メンバーとしてどのように活躍できるか」が問われます。そのため、面接で見られるポイントや評価される内容も、パートとは異なる側面が多くあります。
本記事では、介護施設での採用経験をふまえ、正社員採用の面接で重視されるポイントや、実際の現場で“採用したくなる人”の特徴を、わかりやすくお伝えします。
目次
- はじめに
- キャリアプランを語れるか
- 前職の経験を“どう活かすか”を語れるか
- 責任感・継続力があるか
- 人間関係に対する考え方
- “自分を客観視”できているか
- おわりに
キャリアプランを語れるか
正社員として採用する場合、「長く働いてもらえるか」「将来的にどんな役割を担ってもらえるか」が重視されます。
そのため、面接では「今後どうなっていきたいか」「どんなキャリアを描いているか」といった質問をされることが多くあります。これは単なる希望ではなく、本人の姿勢や覚悟、継続性を見極めるための重要な質問です。
実際にあった質問のひとつに、「あなたがこの施設に入って何ができますか?」というものがあります。この質問には、「自分の経験や強みを、この職場でどう活かしていくか」という視点で答えることが求められます。
たとえば、「これまで認知症ケアを中心に取り組んできたので、その経験を活かして、ご利用者の行動や気持ちに寄り添えるケアを実践したいです」や、「新人教育にも関わってきたので、若い職員のフォロー役として貢献できると思います」といったように、これまでの実績と、それをこの施設でどう活かしたいかをセットで伝えると説得力が高まります。
また、「現場で経験を積んで、リーダーを目指したい」「介護福祉士の資格を取り、専門性を高めたい」といった、自分なりの明確な目標やビジョンを持っている人は、前向きな姿勢として評価されやすくなります。
さらに、「これまでの経験を活かし、後輩の指導にも携わりたい」「利用者様に寄り添ったケアを大切にしていきたい」など、応募先施設の価値観と合致した答え方ができると、採用の可能性はより高まります。
そのためには、事前に応募先施設のホームページやパンフレットを確認し、理念や運営方針、施設の強み、力を入れているサービスなどをしっかり理解しておくことが大切です。
たとえば「貴施設は看取りケアに力を入れていると拝見しました。私もこれまで看取りに関わってきた経験があるので、その経験を活かして貢献したいと考えています」といったように、相手の情報を踏まえた発言ができれば、「この施設のことをよく調べている」「ここで働きたいという意欲がある」と伝わり、より強い好印象につながります。
前職の経験を“どう活かすか”を語れるか
正社員面接では、単に「どこで働いていたか」という履歴の羅列ではなく、「その経験を具体的にどう活かせるか」という視点で見られています。
たとえば、「前職では認知症対応型デイサービスで勤務していたので、利用者の心理的な変化に注意しながら接することを心がけていました」といったエピソードに加えて、「その経験を活かして、認知症の方への声かけや対応において他のスタッフのサポートもしていきたい」といったように、“過去の経験”と“これからの貢献”をつなげて語ることが大切です。
また、介護現場では経験が似ていても、施設によって利用者の層や方針が異なるため、「以前は通所型のサービスでしたが、今回は入所型ということで、生活全体のサポートを学んでいきたいです」といった前向きな補足があると、柔軟性や学びの姿勢も評価されます。
“できること”を伝えるだけでなく、“どう活かして、どんなふうに役立ちたいか”まで丁寧に説明することで、面接官に「一緒に働くイメージ」を持ってもらいやすくなります。
責任感・継続力があるか
正社員として期待されるのは、日々の業務を確実にこなすことだけではありません。急なシフト変更やトラブルへの対応、スタッフ間の調整、そして後輩指導やリーダー的な役割など、さまざまな場面で柔軟かつ主体的に動けることが求められます。
そのため、面接では「これまでの仕事で、困難だったことをどう乗り越えたか」「忙しいときにどんなふうに現場を支えたか」「周囲とどう協力したか」といった、実際の行動や判断力を問われる場面が出てきます。ここで、自分の対応力や責任感を伝えられる具体的なエピソードがあると、信頼感がぐっと高まります。
たとえば、「人手不足の際に他の職員と連携しながら、利用者のケアを滞りなく続けられるよう工夫した」など、自分なりに現場を支えた経験があると非常に強みになります。
また、転職回数が多い場合は、その理由を正直に伝えつつ、「今後はこの職場で腰を据えて働きたい」「ここで成長しながら長く貢献していきたい」といった前向きな動機を明確に話せるよう、事前に準備しておきましょう。
加えて、パート編でも触れましたが、前職の悪口を言うことは絶対に避けましょう。たとえ実際に人間関係や職場環境に問題があったとしても、それを直接的に否定的な言葉で伝えてしまうと、「また同じように不満を言うのではないか」「協調性に欠けるのではないか」と面接官に不安を与えてしまいます。前職について話す際は、事実を冷静に、できるだけ中立的な表現で説明するように心がけましょう。
人間関係に対する考え方
介護現場では、職員同士の連携が不可欠です。特に正社員は、そのチームの中で中心的な役割を担い、現場の雰囲気づくりや人間関係の土台となる存在でもあります。信頼関係が築かれたチームでなければ、良いケアは提供できません。
そのため、面接では「人間関係が理由で辞めた」という話をする際は、細心の注意が必要です。たとえ事実であっても、そのまま伝えてしまうと、「トラブルを起こしやすい人なのでは」「職場に溶け込めない人かもしれない」と受け取られてしまう可能性があります。
面接官は、あなたの“過去”そのものよりも、「その経験から何を学び、どう成長したか」に注目しています。
たとえば、「合わない人がいたとしても、うまく距離を取りながら仕事を続ける努力をしてきました」や、「チームとして円滑に動くために、自分ができることを考えて行動してきました」といったように、前向きな姿勢や改善への努力を伝えることが大切です。
もしも人間関係が理由で退職した場合でも、「その経験を通じて、自分自身のコミュニケーションの取り方を見直すきっかけになりました」など、自己理解や成長につながったことを語れるようにしておくと、好印象につながります。
“自分を客観視”できているか
正社員として採用する場合、その人の“伸びしろ”や“成長意欲”も非常に重要な評価ポイントとなります。
介護の仕事は常に学び続ける姿勢が求められるため、面接では、「自分にどんな課題があると感じているか」「どのようにその課題と向き合ってきたか」「これからどのように成長していきたいか」といった質問を通じて、自己理解や学習意欲があるかどうかが見られます。
たとえば、「報連相が遅くなってしまうことがあったので、常に“早めに共有する”ことを意識するようになり、今では確認事項があればすぐに上司や先輩に相談するよう心がけています」など、自分の課題に気づき、改善に向けて具体的な行動を取っている姿勢は高く評価されます。
また、「苦手な業務も最初は避けがちでしたが、先輩の指導を受けながら少しずつ挑戦し、今では自信を持って対応できるようになりました」など、成長のプロセスを語れることも大きなアピールになります。
自分の弱みを隠すのではなく、ありのままを受け止め、その上で前向きに取り組んでいることを伝えることで、「この人は成長できる」「素直に学べる人だ」と、面接官に信頼感を与えることができます。
おわりに

正社員面接では、パート面接以上に「人柄」と「姿勢」が厳しく見られます。
介護の現場はチームで支え合って動いているため、技術や経験だけでなく、「この人と一緒に働いていけるか」「信頼して業務を任せられるか」といった、職場に溶け込む力や人間性が重要視されます。
そのため、面接では話の内容以上に、「丁寧な受け答えができているか」「相手の話を遮らずに聞けているか」「誠実な態度が伝わっているか」など、受ける側が気づかない部分もしっかり見られています。
緊張して言葉が詰まってしまうのは問題ではありません。大切なのは、自分の言葉で「なぜこの仕事をしたいのか」「どんなふうに現場で貢献したいのか」といった想いを、正直に伝えることです。
さらに、面接官の質問を最後まで聞かずに話し出してしまう方も時々見受けられますが、これは大きなマイナス評価につながります。介護の仕事は“聞く力”が非常に大切な職種です。これはパート面接でも同様ですが、特に正社員の場合はチームの調整や新人指導など“人の話を聞きながら動く力”が一層求められます。
面接という場においても、相手の話にしっかり耳を傾け、それから自分の考えを丁寧に返す姿勢が、最も信頼されます。「話を聞かない」「自分の話ばかりする」といった印象を与えてしまうと、協調性や柔軟性に欠けると判断されてしまうこともあるため注意が必要です。
あなたの想いと誠意が伝われば、きっと良いご縁がつながるはずです。
そのためにも、しっかり準備をして、堂々とした気持ちで面接に臨んでください。
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