仕事をしていると、思い描いていた理想と違う場所に立っていることに気づく瞬間があります。
「こんなはずじゃなかった」と感じて嫌気がさしたり、逆に仕方なく選んだ道の中に思わぬ喜びを見つけたり。
キャリアの正解は一つではなく、真実と嘘のあいだを行き来しながら自分なりの答えを探す日々が続きます。
そんなとき、私がよく思い出すのがMr.Childrenの「Any」という曲です。
2002年にリリースされたこの曲には、働く私たちが抱える葛藤や、迷いの中にある小さな希望を言葉にしてくれているようなフレーズがいくつもあります。
今回は、この「Any」の歌詞をキャリアや仕事に重ね合わせながら、私なりの解釈を書いてみたいと思います。
嫌気がさして、すべてが無意味に思える瞬間
上辺ばかりを撫で回されて
急にすべてに嫌気がさした僕は
僕の中に潜んだ暗闇を
無理やりほじくり出してもがいてたようだ
Any(Mr.Children、2004年)
仕事をしていると、成果や数字ばかりを求められたり、形だけの評価や言葉をかけられたりすることがあります。
それは一見ありがたいものの、心の奥では「本当に自分のことを見てくれているのだろうか」と虚しさを感じる瞬間があります。
そんな表面的なやり取りが積み重なると、ふとした瞬間に「もう全部嫌だ」とすべてに嫌気がさしてしまう。
そのとき、人は自分の中に潜んでいた暗い感情──不安や怒り、孤独や劣等感──を、無理やりこじ開けるようにして直視し、もがいてしまうのです。
けれども、この苦しい時間は決して無駄ではありません。
「なぜこんなに嫌なのか」と向き合うことで、自分が本当に求めているものや、大切にしたい価値観に気づくきっかけになるからです。
仕事において暗闇に向き合う経験は、必ずしもマイナスではなく、むしろ次の一歩を見つけるための通過点とも言えるのです。
真実と嘘のあいだを行き来しながら見えてくるもの
真実からは嘘を
嘘からは真実を
夢中で探してきたけど
Any(Mr.Children、2004年)
仕事の中では、「これこそ正解だ」と信じていたやり方や環境が、時が経つにつれて違和感だらけに感じられることがあります。
逆に、「仕方なく選んだ」「仮の選択」だと思っていた仕事が、自分の力を発揮できる場になったり、大切な出会いをもたらしてくれることもあります。
つまり、真実だと思ったことの中に幻のような嘘を見つけることもあれば、嘘のように感じていたものの中から本当の意味を掴むこともある。
私たちはその境界を行き来しながら、試行錯誤し、夢中で自分なりの答えを探しているのだと思います。
仕事において「これが正解」と言い切れるものは少ない。
むしろ、真実と嘘の間を探り続けるプロセスそのものが、自分のキャリアを形づくっていくのです。
キャリアは描き直せる「自画像」
今 僕のいる場所が 探してたのと違っても
間違いじゃない きっと答えは一つじゃない
何度も手を加えた 汚れた自画像に ほら
また12色の心で 好きな背景を描きたして行く
Any(Mr.Children、2004年)
働いていると、「今の自分の居場所は、探していた理想と違う」と感じることは少なくありません。
しかし、それは「間違い」ではなく、ただ一つの正解が存在しないキャリアの過程にすぎないのです。
何度も迷ったり失敗したりしながら、自分の「自画像」を描き直すように経験を重ねていく。
そのたびに汚れたり修正を繰り返したりするけれど、それがあるからこそ深みのある一枚に仕上がっていく。
そして私たちは、また「12色の心」で――多様な感情や価値観を持ちながら、自分の好きな背景を描き足していける。
キャリアとは、理想どおりにまっすぐ進むものではなく、描き直しや修正を繰り返しながら自分らしい絵を仕上げていく、まさに創作のようなものなのです。
ここでいう「12色」とは、1年を象徴する12ヶ月や、個性を表す12星座を意味しているのかもしれません。
けれども本質は、「誰もがその時その時で、自分の好きなように意味を持たせることができる」ということ。
つまり「12色」とは固定された答えではなく、自分が選び取る多様性の象徴なのだと思います。
後編につづく
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