「もう限界」でも、少し立ち止まることで見える“別の道”の存在
「もう無理です」「限界なんです」
面接やキャリア相談の場で、介護職の方から何度も聞いてきた言葉です。
私はこれまで、介護職専門の人材紹介会社でキャリアアドバイザーとして働き、200回以上、介護職の面接に立ち会ってきました。
多くの方との対話の中で感じたのは、
「もう介護は続けられない」と感じたその瞬間こそ、キャリアの分かれ道である
ということです。
今回は、現場でたくさんの方と向き合ってきた経験から見えた、
介護という仕事の“辞めどき”と“踏みとどまりどき”についてお話しします。
目次
- 「もう限界」でも、少し立ち止まることで見える“別の道”の存在
- 「辞めたい」は、サインであって、終わりではない
- 「辞めどき」
- 介護という仕事から離れるべきとき
- 一度離れても、また戻ってくる人も多い
- 「踏みとどまりどき」
- 介護の中に、まだ“続けられる道”があるとき
- 「介護が合わない」のか、「今の関わり方が合わない」のか
- 「話すだけ」で、別の未来が見えてくることがある
- おわりに|「辞める」も「続ける」も、選べるあなたでいてほしい
「辞めたい」は、サインであって、終わりではない
介護の現場は、身体的にも精神的にも本当に大変な仕事です。
夜勤、利用者対応、家族対応、人手不足、給与水準、人間関係――
「もう限界」と感じる瞬間があるのは、ごく自然なことです。
でも、これまでたくさんの面接・面談に立ち会ってきた中で強く思うのは、
「辞めたい」という感情は、キャリアを見直すサインであり、決して“終わり”ではないということ。
「自分にはもう介護しかできないと思っていた」
「でも話してみて、自分にはまだ選択肢があると気づけた」
そんな言葉を、これまで何度も聞いてきました。
一度立ち止まって考えてみると、
- 本当に「介護そのもの」を辞めたいのか
- それとも「今の関わり方」を変えれば続けられるのか
——そうした“別の道”が見えてくることもあるのです。
「辞めどき」

介護という仕事から離れるべきとき
では、どんなときに介護職そのものを手放す選択をした方がいいのでしょうか。
それは、環境や働き方を工夫してもなお、根本的に心身が追いつかなくなっているときです。
例えば、
- 利用者さんに対して感情を持てなくなっている
- 自分を責め続けてしまい、自己肯定感が著しく下がっている
- どの職場に行っても「また同じことが起こる」と強い不安を抱えている
- 介護という仕事を想像しただけで、気持ちが重くなる
こうした状態は、もう限界を越えているサインかもしれません。
そのまま無理に続けることで、心のエネルギーが枯渇し、
次に向かう力すら失われてしまうこともあります。
だからこそ、「今は一度、介護から離れる」選択は、決して逃げではありません。
むしろ、自分の人生を守るための、前向きな決断だと思います。
一度離れても、また戻ってくる人も多い
実は、いったん介護の仕事を離れた方が、数年後に「やっぱり介護がしたい」と戻ってくるケースも多くあります。
そのときは、
- 自分にとって無理のない関わり方を選んでいたり
- 「やっぱり人と関わる仕事が好き」と改めて気づいていたり
と、より自分らしく介護と関わっている人が多いんです。
だからこそ、「今は辞める」という選択も、
キャリアの終わりではなく、次のステージの準備期間と捉えてもらえたらと思います。
「踏みとどまりどき」

介護の中に、まだ“続けられる道”があるとき
一方で、「辞めたい」と感じる理由が、
職場や働き方の見直しによって変えられるものであれば、
それは介護を手放す前に、一度踏みとどまって考えてみる価値があるタイミングかもしれません。
例えばこんなケースです:
- 夜勤が体力的にきつい
→ 日勤中心のデイサービスや訪問介護に転職 - 施設ケアが合わない
→ 在宅介護や福祉用具の相談業務にシフト - 人間関係に疲れた
→ 小規模事業所で相性の合う職場を探す - 家庭との両立が難しい
→ スポットワークや時短勤務に切り替える
実際、「もう介護なんて無理」と話していた方が、
働く環境や職種を変えただけで、前向きに仕事と向き合えるようになったケースは本当にたくさんあります。
「介護が合わない」のか、「今の関わり方が合わない」のか
「自分には向いてないかも」と思ったときこそ、
一度立ち止まって、こう問いかけてみてください。
本当に“介護そのもの”が合わないのか?
それとも、“今の関わり方”が合っていないだけなのか?
職場の人間関係が悪かったり、
マニュアルに追われて自分らしいケアができなかったりすると、
「もうこの仕事そのものが嫌だ」と感じてしまうのは自然なことです。
でも、職場や働き方を変えるだけで、
「本来やりたかった介護」に戻れることもあります。
「話すだけ」で、別の未来が見えてくることがある
キャリア相談の中で、私は何度もこんな場面に出会ってきました。
最初は「もう続けられない」と話していた方が、
自分の状況を整理しながら話すうちに、
「それならまだやれるかもしれない」
「介護は続けたい。でも今の働き方じゃない形で」
と、前向きに道を選び直す姿を何度も見てきました。
話すことで、選択肢が“白か黒か”ではなく、
「自分らしく働くためのグラデーション」が見えてくるんです。

おわりに|「辞める」も「続ける」も、選べるあなたでいてほしい
介護という仕事を辞めても、もちろんいい。
続けても、もちろんいい。
でも、どちらにしても、
「自分で納得して選ぶ」ことが、何より大切だと思っています。
現場で本当に苦しい状況にあるとき、
「もう限界」「今すぐ辞めたい」と思うのは当然のことです。
でも、そんなときこそ、感情の勢いで突発的に結論を出す前に、
ほんの少しだけ立ち止まって、誰かに相談してみてほしいのです。
「本当に辞めたいのは介護そのものなのか」
「それとも、今の働き方や環境がつらいだけなのか」
それが整理されるだけでも、選べる道が見えてきます。
介護職には、想像以上にいろいろな形があります。
あなたにとってしっくりくる関わり方が、きっとどこかにあります。
そしてその答えは、「話してみること」から始まるかもしれません。
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