1995年にリリースされたMr.Childrenの『es 〜Theme of es〜』。
私はミスチルの大ファンで、あのイントロが流れるたび、当時の空気や景色までよみがえります。
発売当時の私は、「エスって何だろう?」と純粋に疑問に思い、歌詞カードを片手に意味を調べ始めました。
そしてそこで出会ったのが、精神分析学の創始者フロイトの“エス”——人間が生まれながらに持つ本能や衝動の概念でした。
音楽から心理学へ、そして人間の心の構造へと興味が広がった瞬間です。
そして先日、ある読書会でこのエスの話題が出ました。
その瞬間、心の中で『es』のメロディと歌詞が鮮やかによみがえり、「これをキャリアの話に置き換えたら面白いかもしれない」と思ったのです。
そこで今回は、この曲を超拡大解釈して、キャリア選択や働き方にあてはめて考えてみます(無理やりですが大目に見てください笑)。
目次
- 理性と衝動の間で揺れる私たち
- es(イド)=抑え込まれた本音
- 理性と衝動のせめぎ合い
- 自分の原点に戻る瞬間
- 一歩を踏み出す
- あなたの中のesは何を語る?
理性と衝動の間で揺れる私たち
『es 〜Theme of es〜』は1995年5月10日にトイズファクトリーよりリリースされました。
タイトルにある“es”は、心理学用語で「イド(id)」、つまり人間が生まれながらに持つ本能や衝動を意味します。
この曲は、社会の中で理性と衝動の間で揺れながらも、自分らしい道を探し続ける姿を描いています。
キャリア相談の現場でも、この構図はよく目にします。
「安定を手放したくないけど、本当はやってみたいことがある」
「挑戦したいけど、失敗が怖い」——そんな揺れ動く心は、『es』が映し出す情景と重なります。
es(イド)=抑え込まれた本音
長いレールの上を歩む旅路だ風に吹かれ バランス取りながら
”答え”なんてどこにも 見当たらないけど
それでいいさ 流れるまま進もう
手にしたものを失う怖さに
縛られるくらいなら勲章などいらない
【es】〜Theme of es〜(Mr.Children、1995年)
当時すでにトップアーティストだった桜井さんは、多くを手に入れると同時に、自由が少しずつ削られていく感覚もあったはずです。
やりたいことがあっても立場や期待がそれを制限する——そんな状況で、エス(本能)と超自我(理性)の間で揺れながら、バランスを取ろうとする姿が垣間見えます。
キャリアでも同じです。
「新しい挑戦をしたい」「もっと自由に働きたい」という衝動はエスの声。
けれど、家族や職場の期待、安定した収入、年齢といった理性の声が「無理だ」と制止し、その欲求は押し込められてしまいます。
外からのプレッシャーと内面の不安が重なり、本音は次第に表に出にくくなるのです。
何が起きても変じゃない
そんな時代さ覚悟はできてる
よろこびにふれたくて
明日へ僕を走らせる「es」
【es】〜Theme of es〜(Mr.Children、1995年)
前述したように、この曲が発売されたのは1995年5月10日。
この年、日本は阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件という二つの衝撃的な出来事に見舞われました。
「何が起きても変じゃないそんな時代」という言葉は、予測不能な現実の中でこそ、自分のエスに素直に、やりたいことをやって生きようという決意の表れのようにも感じられます。
キャリアも同じです。
「いつかやりたい」と思っているだけでは、その“いつか”は訪れないかもしれません。
理性と衝動のせめぎ合い
エスと超自我のせめぎ合いは、冒頭の「バランスを取りながら」という一節にも表れています。
理性は生活を守る盾。しかし、理性だけでキャリアを選び続けると、「やらされ感」が強まり、情熱を失い、燃え尽きやすくなります。
一方、衝動だけに従えば、準備不足や現実とのギャップで挫折しやすい。
だからこそ、この二つを対話させることが必要です。
- 本能の声を言語化する(何にワクワクするか/何に違和感があるか)
- 現実の条件を可視化する(収入、家族、健康など)
- 小さく試す(副業、短期講座、スポットワーク、90日間の試験運用など)
例えば介護の現場なら、
スポットワークで他事業所を体験
↓
合う働き方を発見
↓
必要資格の学習計画を立てる
といった“ミニ実験”が有効です。
理性=ブレーキ、衝動=アクセル、計画=ハンドルと考えると、安全に前進できます。
自分の原点に戻る瞬間
Oh なんてヒューマン
裸になってさ 君と向き合ってたい
栄冠も成功も地位も名誉も
たいしてさ 意味ないじゃん
【es】〜Theme of es〜(Mr.Children、1995年)
肩書きも、立場も、人からの評価も——すべてを脱ぎ捨てたとき、残るのは自分の本音だけ。
裸になってしまえば、栄冠も成功も地位も名誉も、思っていたほど大きな意味は持たないのです。
だからこそ、その“むき出しの自分”が何を求め、何に心を震わせるのかを知ることが大切です。
一歩を踏み出す
今ここにいる自分を
きっと誰もが信じてたいのさ
過ぎた日々に別れ告げて
君は歩き出す
【es】〜Theme of es〜(Mr.Children、1995年)
この一節は、「過去を受け止めて手放し、自分を信じ、未来へ踏み出す」瞬間を描いています。
キャリアコンサルの視点で言えば、転職や人生の転機に立ったときの心の動きそのもの。
『es』は、本音を認めることはわがままではなく、自分らしい人生を選ぶための羅針盤になると教えてくれます。
あなたの中のesは何を語る?
何が起きても変じゃない
そんな時代さ覚悟はできてる
よろこびにふれたくて明日へ
僕を走らせてくれ
僕の中にある「es」
【es】〜Theme of es〜(Mr.Children、1995年)
『es』は恋愛ソングにとどまらず、人生やキャリアの葛藤を映す鏡でもあります。
理性と衝動の間で揺れながらも前に進もうとする姿は、キャリア形成そのものです。
キャリアに唯一の正解はありません。
大事なのは、自分の中のesが何を望んでいるのかを理解し、それを現実にどう活かすか。
そのプロセスこそが、あなたらしいキャリアを形づくっていきます。
あなたのesは、今どんな声をあげていますか?
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